雑誌『経済』4月号で、岡田知弘京大教授が「地域循環型経済と新しい自治像を」として重要な指摘をしています。菅政権が、多国籍企業が活動しやすい国づくり(小泉「構造改革」)に立ち戻り、それを加速させる方向(TPP参加)に舵を切ったことは大きな過ちだ、として、次の4点を指摘しています。
①工業製品輸出拡大のため農産物輸入自由化で、自給率低下など主権を喪失する誤り②経済発展は輸出拡大しかない、と言う重商主義の誤り③自動車・家電メーカーの「集中豪雨型輸出」の代償として農業、繊維の輸入自由化を受け入れた誤り④「グローバル国家」づくりと称し、輸出大企業の利益優先で国民の生活、国土の産業、自然条件を崩す誤り
菅政権の「新成長戦略」とは違う、われわれの対抗軸、展望は何か、として、岡田教授は「大企業による輸出主導の成長」神話を歴史的に検証しています。
日本の高度経済成長では、雇用者所得と個人企業所得の寄与度が大きかった(夫々41%及び32%)。個人企業や農業などの方が高度成長に大きく寄与した、と言うのです。これに対して、貿易は輸出と輸入が均衡して富は増えなかった、と指摘しています。
グローバル化した「資本の活動領域」は、海外展開などで「人間の生活領域」から大きく乖離しています。これに対して、事業所数や従業員数の圧倒的多数をしめる中小企業、農家や協同組合、NPO法人、地方自治体が、毎年まとまった資金を投下し、地域内で雇用や仕事、所得を生み出し、また、その所得の一部が預金や税金となり、地域内に再投融資することで「地域内再投資力」を高めています。「人間の生活領域」としての地域では、こうした地域循環型経済をつくることが求められる、と岡田教授は強調しています。
昨日11日午後3時前から24時間連続で、東北太平洋沖地震による激甚災害が次々と報道され、今も続いています。地震国日本で、安心できるまちづくりとは何かが問われています。また、原子力発電の危険性が浮き彫りになっています。何よりも、被災地の人命救助、生活再建・復興は、全国民の願いであり、政府が最優先に取り組むべき課題です。それは、地域循環型経済を再生・発展させる契機となります。今こそ海外展開・産業空洞化から内需主導・地域循環重視の経済への転換が求められるのではないでしょうか。
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