農業が不況業種となってから久しい。「儲からない」「後継者が居ない」などの声が上がったのは一昔前のこと。いまや、「自分の代で農業は終わりだ」とあきらめ、「廃業」「終わり業種」宣言を聞くことが多くなってきました。さらに、商店街も、町の鉄工所も、どの業種も、農業同様不況業種になってきた感があります。農業が不況業種から脱却できるかどうか、これが全業種の不況克服のキーポイントになるのではないでしょうか。
日本農業が「儲からない」「後継者が居ない」ところから脱却するためには、再生産を可能にする価格保障及び不利な条件を補う所得補償が不可欠です。しかし、資本主義の「自由競争」の下で、価格破壊が放置され、条件不利地などの補償が無視されれば、再生産不能に陥ることは自明です。資本主義の矛盾ーー「自由競争」こそ不況の原因ーーをコントロールすることが不況対策なのです。
さらに、日本の場合、宅地並みの重税で都市近郊農地を手放させた上、農地の借地権と食糧生産に株式会社参入を認め農業の資本主義化を進めようとしています。資本主義の「自由競争」によって、農地や農業のさらなる荒廃を招く危険があるのではないでしょうか。
そもそも資本主義は、それ以前の社会の主要な生産が、自然の中での農業生産だったものから、工場制の大量生産に変革させました。そして農業は、農機具、農薬、肥料など工場生産物を活用して発展してきました。しかし、今や世界的な食糧危機や温暖化など地球環境破壊において、工場制の大量生産やグローバルな大量消費の影響が問題視されるようになって来ました。
予測困難な自然現象に対応して安定的な食糧生産を確保する、自然の生態系と循環に沿って農林漁業を多面的に発展させる、いずれも資本主義が発達させた科学技術が欠かせません。そして、経済でも、科学技術でも、現代は「構造パラダイム(基本的な枠組み)」を問題視せざるを得なくなっていると言われます。
資本主義の発達で後景に押しやられた「自然の中での農業」の再生こそ、資本主義の死に至る病ーー金融・過剰生産恐慌から脱却する道であり、21世紀の人類的課題ーー構造パラダイムーー解決のカギとなるのではないでしょうか。
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