水で、燃えている核燃料を消すことが出来るかのような報道がなされています。「水を注入」「海水注入」などの報道が、まるで普通の火災のときの、放水のように受け取られる言い方だからです。
その間違いは、原子炉の写真ーー水の中で青白く燃えている燃料棒(空だきで3000℃近くになる)ーーーで直ぐ明らかになります。水で核反応が止むのではない、この事実の報道が、不足しているのではないでしょうか。
では核燃料棒が、水の中に沈められているのは何のためか。冷却材ですが、熱を得て蒸気となってタービンを回して発電するためでもあります。より重要なことは、水が、核反応を抑制する「減速材」の役割を持っていることです。しかし、「減速」であって「中止」ではありません。
一気に核反応が進めば、原子爆弾と同じ原理で、高温になり、爆発を起こします。しかし、水がもつ冷却・減速材としての優れた性質によって、高温・爆発に至らず、300℃前後の水蒸気をつくり、タービンを回して発電しています。(火力発電は、重油または天然ガスで600℃の蒸気をつくり、熱効率は原子力発電より高い)
水が無くなれば「燃料棒の露出」という簡単な表現で済ませられることではありません。「空だき状態」と言われる、制御するものが無くなり、炉心溶融に至ります。核燃料が高熱と高濃度放射能を出し続ける状況に陥るのです。スリーマイル島では、炉心溶融を起こしても、格納容器で防ぎましたが、日本では格納容器の底が薄いので心配だ、と言われています。
「大丈夫だ」「放射能はたいしたことは無い」など、色あせた「安全神話」にしがみつくような表現でなく、事実を正確に国民に伝え、避難や防災対策を促すべきではないでしょうか。
日本の原子量発電所数は、アメリカに次ぎ世界第2位の69(建設中、計画中を含め)すべて沿岸部。冷却塔を省いて、温排水として海に垂れ流し出来るからです。また、経産省は、原発を受け入れれば、20年間に固定資産税・交付金が約900億円地元自治体に入る、と宣伝してきました。しかし、20年経つと、設備の減価償却による固定資産税減少などで、年間収入は半分以下に減ります。税収を確保するため、もう一つ原発誘致をしなければならなくなります。集中立地で「原発銀座」と呼ばれるようになるのです。
こうした、日本列島全体への原発拡張政策が、今鋭く見直しを迫られています。
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時間の経過とともに深刻な被害実態が明らかになってきました。高台へ、5階以上の鉄筋コンクリート建物へと、避難した人々の目の前で、自分の家が、町が、根こそぎ濁流に巻き込まれていく恐怖、家族や友達を助け出すことも出来ず悪夢を見ている思い。濁流に巻き込まれ阿鼻叫喚の光景が想起されます。
被災地以外の国民、私たちは何をしたらよいのか。まず「被災者救援募金」に取り組みましょう。いま、世界から支援の手が差し伸べられています。これまで他の国の大災害のとき、日本からの援助が必要な被災者にキチンと渡らなかったという実態が報道されてきました。今度は日本の番。善意がキチンと伝わるでしょうか。支援の受け入れルート、分配ルートの構築が急がれます。緊急時対応力、判断力が試されます。それが出来る人を当面のリーダーにしてルートをつくり、それを全国民に、世界に示して、さらに大きな支援の輪を構築していくことが求められています。
緊急時にリーダーシップを発揮する人が出てきます。そういう人やグループを、臨時公務員として採用することを含め、人材補強が必要ではないでしょうか。人こそ難局を乗り切る力を持っている!
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雑誌『経済』4月号で、岡田知弘京大教授が「地域循環型経済と新しい自治像を」として重要な指摘をしています。菅政権が、多国籍企業が活動しやすい国づくり(小泉「構造改革」)に立ち戻り、それを加速させる方向(TPP参加)に舵を切ったことは大きな過ちだ、として、次の4点を指摘しています。
①工業製品輸出拡大のため農産物輸入自由化で、自給率低下など主権を喪失する誤り②経済発展は輸出拡大しかない、と言う重商主義の誤り③自動車・家電メーカーの「集中豪雨型輸出」の代償として農業、繊維の輸入自由化を受け入れた誤り④「グローバル国家」づくりと称し、輸出大企業の利益優先で国民の生活、国土の産業、自然条件を崩す誤り
菅政権の「新成長戦略」とは違う、われわれの対抗軸、展望は何か、として、岡田教授は「大企業による輸出主導の成長」神話を歴史的に検証しています。
日本の高度経済成長では、雇用者所得と個人企業所得の寄与度が大きかった(夫々41%及び32%)。個人企業や農業などの方が高度成長に大きく寄与した、と言うのです。これに対して、貿易は輸出と輸入が均衡して富は増えなかった、と指摘しています。
グローバル化した「資本の活動領域」は、海外展開などで「人間の生活領域」から大きく乖離しています。これに対して、事業所数や従業員数の圧倒的多数をしめる中小企業、農家や協同組合、NPO法人、地方自治体が、毎年まとまった資金を投下し、地域内で雇用や仕事、所得を生み出し、また、その所得の一部が預金や税金となり、地域内に再投融資することで「地域内再投資力」を高めています。「人間の生活領域」としての地域では、こうした地域循環型経済をつくることが求められる、と岡田教授は強調しています。
昨日11日午後3時前から24時間連続で、東北太平洋沖地震による激甚災害が次々と報道され、今も続いています。地震国日本で、安心できるまちづくりとは何かが問われています。また、原子力発電の危険性が浮き彫りになっています。何よりも、被災地の人命救助、生活再建・復興は、全国民の願いであり、政府が最優先に取り組むべき課題です。それは、地域循環型経済を再生・発展させる契機となります。今こそ海外展開・産業空洞化から内需主導・地域循環重視の経済への転換が求められるのではないでしょうか。
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