渡辺治、二宮厚美、岡田知弘、後藤道夫4氏共同の「はしがき」で「構造改革の政治に対しそれぞれの持ち場で立ち向かいその変革を模索してきた4人が約1年前から議論し準備してきた論文集」として「新しい政治の関頭にたって、観客に止まることなく歴史をつくる主人公にならんとしている人々には是非とも読んで運動の武器にしてもらいたい。そして、新自由主義、構造改革に変わる新しい政治をつくるための共同作業にともに加わることを訴える」と述べています。
「第1章政権交代と民主党政権の行方」(渡辺)で、「総選挙の結果は何を示すか」「民主党の地滑り的勝利をもたらした2つの力」「民主党政権下での構造改革の行方」「民主党政権下で改憲、軍事大国化はどう変化するのか」の5テーマで分析を加え、「新しい福祉国家への闘いをどう切り開くか」と提起しています。
「第2章世界同時不況と新自由主義の転換」(二宮)で、「自ら墓穴を掘った新自由主義の『政治的転換』」「21世紀グローバル恐慌の基本構造」「新自由主義的蓄積の帰結としてのアメリカ発金融恐慌」「新自由主義の下での日本の過剰生産恐慌」「政権交代後の新福祉国家の課題」の4テーマで展開し、「おわりに」として「当面の鳩山内閣動きを評価・判断していくときの典拠となる」「福祉国家の機能連関図」を掲げています。
「第3章構造改革による地域の衰退と新しい福祉国家の地域づくり」(岡田)では、「構造改革と地域の疲弊」「市町村合併・『三位一体の改革』と地域」と展開し、「構造改革への対抗軸の形成と住民自治に基づく地域づくりの広がり」「新しい福祉国家の下で、持続可能な地域、日本をつくりだすために」と運動方向を示しています。
「第4章構造改革が生んだ貧困と新しい福祉国家の構想」(後藤)では、「貧困・生活困難の拡大とその背景」と題して「日本型雇用破壊・構造改革と開発主義国家体制の特質」を展開し、「新たな福祉国家の形成に向けて」と提起しています。
それぞれの論文にお「いて、民主党の歴史、マニュフェスト、各種統計などが掲載され、説得力ある資料を提供してくれています。新自由主義・構造改革への徹底した批判とともに、「新しい福祉国家」としての中身の提起が心を打ちます。
政治と経済とが連関して変動する今、見通しをもった確かな立場を与えてくれる書物です。なお旬報社(旧労働旬報社)創立60周年企画の出版物です。