日経12~17日付に5人の識者による「試論 成長戦略」が連載されました。小林慶一郎経済産業研究所上席研究員は「子ども手当や公立高校授業料無償化など新政権が打ち出した教育関連の施策は、次世代の人的資本を促す成長戦略」と評価し、「構造改革を全面的に止めるのでなく、市場の自由化に合わせてセーフティネットの整備を加速せよ」と言います。
脇田成首都大学東京教授は「短命政権が続くなど政治が指導力を発揮できず、企業が賃上げを後回しにして巨額の内部留保を投資に充てた結果、日本の生産構造は世界経済よりも二歩も三歩も先に進んでしまった。これが今時不況でかえって傷口を大きくした要因」として「介護・医療・環境を中心とした鳩山由紀夫政権の『成長戦略』の内容は皮肉なことだがかえって妥当ともいえる」と評価し「環境が整った企業から確実に賃上げを実施することで徐々に家計の可処分所得を高め、少子化対策に万全を期す。それ以外に日本の長期停滞を食い止める方策はない」と言います。
藤本隆弘東京大学教授は「現場は企業の一部分にすぎないが、ものづくり経営学では、自立した能力構築主体だ」として、トヨタの場合も「本社を中心に、品質の過信からくるごう慢な言動や『質を求め量は結果』と考える原則を逸脱し量を追った錯誤があった」とし「『強い現場、弱い本社』の克服はトヨタもしかりだ」と言います。
これらの識者によって、大企業の巨額内部留保が「賃上げを後回しにした結果」と断罪され、2年前には2兆円超の純利益を上げたトヨタの「リコール問題」を「強い現場、弱い本社」と称して、その企業体質を痛烈に批判し、「成長戦略」として、介護、医療、環境分野を挙げ、賃上げで可処分所得を高め、少子化対策に万全を期すること、との提言に注目したのです。大企業優先の政治を変える事が求められているのだと思います。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。