前衛1,2月号に、この秋東大駒場で開催された「公開連続セミナー」の内容が載りました。1月号では「大学時代にマルクスが必読な理由」と題し「今日生きている世界を、自然の面からも、さらにまた社会の面からも、全体としてまるごととらえてもらいたい」として、マルクスの自然観(唯物論、弁証法)、社会観について語っています。
2月号では、「マルクスの目で見た21世紀の日本と世界」と題して、「21世紀の資本主義はどんな段階に来ているか」「社会主義への動きはどうなっているか」「アジア・アフリカ・ラテンアメリカには、どんな動きがあるか」「世界の中で日本資本主義を見てみよう」と、4つのテーマで語っています。
16世紀にヨーロッパで資本主義が生まれたとき、中国に明、インドにムガール、中東にオスマン・トルコなどの大帝国があり、アメリカ大陸にインカ、アステカ王国が栄え、日本は戦国時代だった。19世紀「ヨーロッパの資本主義が世界の広大な地域を植民地・従属国家に変え、20世紀は帝国主義の時代として始まり、経済的な発展、物質的生産力という面からいえば、おそらく歴史に中でも、資本主義がもっとも栄えた時代だと言える」。しかし、2つの世界史的な出来事が起こり「資本主義が支配する領域が大きく縮小」「1917年社会主義の革命運動が勝利し、資本主義をのりこえる体制ーー社会主義をめざす国が、世界に現実に登場」「第二次世界大戦の終結後に、植民地体制の崩壊が起こった」と述べています。
朝日新聞グローブ(09.10.19)が掲載した「資本主義500年の歴史」を引用して、19世紀(1820年)の世界は、GDP比重で、イギリス5%、ドイツ4%、アメリカ2%と低く、封建的な力で経済力を築いた中国は33%と大きい。マルクスが資本主義は世界の「片隅」だと言ったことが実感される、と語っています。しかし、19世紀後半から20世紀に入ると、植民地・従属国の状態に落ち込んだ中国やインドの経済力がどん底にまで低下する一方、資本主義諸大国の比重が大きくなり、特にアメリカは急成長した。そして、21世紀になると、中国の経済的躍進に象徴されるように、社会主義をめざす国ぐにのGDP伸び率は4・8倍(1992年から2006年まで)と経済発展が速い。
1月号で、21世紀の資本主義について、内部的な矛盾の深刻化という面で危機的な状況を迎えていることを指摘し、2月号で、資本主義が自分の歴史の中でどんな段階に来ているか、という角度から見ます。この両面から見ると、世界に新しい時代がひたひたと迫っている様子がよく分かる、と語っています。